第三回 目白不動尊(江戸五色不動)
目白不動は、JR山手線の
目白駅
で下車する。 目白と言っても地方の方にはなじみがわかない かもしれないが、皇太子殿下が通っていた 、あの学習院大学が駅前にある駅である。 また年配の人には田中角栄元首相の邸宅が あった街であると言った方がピンと来るか もしれない。駅改札を出ると目の前タクシーや 都バスが絶え間なく行き来する目白通りという 大きな通りに出くわすことになるが、目白不動へは その通りの駅横の派出所前にある横断歩道を渡り、 都営バス61系統で新宿駅西口駅行きに乗って行く ことになる。今日は、あいにく雨に見舞われてし まったが、乗車したバスの中は傘を持った多くの人で あっという間に鮨詰めになってしまった。このまま バスに乗り続けるのはつらいと思いつつも5分ぐらい バスに揺られると、まもなく目的地の目白不動に 近い停留所である
鬼子母神前
に着いた。 停留所を下り、 すぐ手前のコンビニで目白不動への道を尋ねたが、 店員さんは一瞬首をかしげたものの、金乗院という お寺だと話すとピンときたらしく丁寧に地図を見せて その場所を教えてくれた。
停留所から後ろ右を振り向くと お弁当屋さんらしき店がすぐ視界に止まるが、そのすぐ 横の電信柱に金乗院・目白不動なる看板を見つけること ができた。どうやら目的地はその電信柱横のその坂の中を 下ったところにあるようだ。停留所すぐ後ろの横断歩道を 渡り、正面の坂を100メートルくらい下りたであろうか、 坂を下りきると右横にかなり古めかしい山門が目の前に現われた。
どうやらここが今回の目的地の
金乗院・目白不動
らしい。 後から調べてみるとこのあたりには宿坂の関があり、 関東お留めの関とされ、このお寺の裏手に実際関所があったようだ。 またこの地には北条時代に処刑場があったのだと言う。 山門前は、雨が降っていたせいでもあるが、ほとんど 人には出くわさなかった。このお寺、それ程大きなお寺 ではないが、お墓もあり、地元・地域に溶け込んだ由緒ある お寺だという雰囲気である。一礼して山門をくぐると、 広い敷地の中のすぐ手前に本堂らしきものが見えたが、 すぐそれが金乗院だとわかった。
金乗院は、正式には神霊山 金乗院慈眼寺と称し、開山永順が本尊観世音菩薩を勧請して 観音堂を築いたのが草創とされる。永順は文禄3年(1594年) 6月示寂(じじゃく)であり、そこから考えて当院はそれ以前の 創建と思われるとのことである。当初は蓮華山金乗院と言い、 中野宝仙寺の末寺であったが、後に神霊山金乗院と改め護国寺 の末寺になったと言う。
本堂手前まで歩くと小さな塔が目に 止まるが、これは
「倶利伽羅不動庚申」
という不動明王の形をした非常 に珍しい形の塔である。 この倶利伽羅不動庚申、寛文6年(1666年) に建てられた庚申塔だとされる。
また山門右手上を見ると数メートル 先に小さなお堂が視界に飛び込んだが、その手前にあった目白不動と いう看板から、そのお堂が目白不動のお堂だとすぐわかった。 目白不動は以前は東京の文京区関口にあったとされるが、昭和20年5月の 戦災によって焼失してしまったためご本尊のお不動様をこの地に移して 合併したのだということである。本堂でお祈りを済ませ、その不動堂の 側まで足を進めるが、あいにくこのお寺ではお不動様は日頃公開しているもの でないらしくそのご尊容を拝見することができなかった。
文献によるとこの目白不動のお不動様は、弘法大師御作と 伝えられ、身の丈八寸、
「断臂(だんぴ)不動明王」
という50年に一度 開帳されてきた秘仏であるとわかった。 衆生のためにみずから断ち切られた御臂(ひじ)をさし与えた と言われ、すこぶる霊験あらたかだと解される。 縁起によると弘法大師が唐より帰朝後、出羽の国の湯殿山に 参篭されたときに大日如来が現われ不動明王の御姿に変じ 、忽然と大師の元に現われて次のように告げたと言う。 「この地は諸仏内緒秘密の浄土なれば、有為の穢火をきらえり 、ゆえに凡夫登山する事かたし、今汝に無漏の浄火をあたうべし。」と。 そして明王は、持てるところの利剣で自らの左の御臂(おんて)を 切ると霊火が盛んに燃え出でて、仏身に満ち溢れたとされる。 大師はこれを見て明王のお姿をそのまま二体に謹刻して 、一体は同国の荒沢に安置し、もう一体は自ら護持したと 伝えられる。 本堂左の寺務所で御朱印を受け、念のためお不動様はいつ拝見 できるか聞いてみたが、正・五・九月の28日にご開帳がされること がわかった。 寺務所を出てあたりを見回したが、雨は小降りになっていた。 「雨の中での不動巡りも何かのご縁かもしれない。」ふとそう思い、 帰路についた。(編集:コンガラ童子)
◆金乗院・目白不動◆
住所:東京都豊島区高田2-12-39
電話:03-3971-1654
アクセス:JR山の手線目白駅より都営バス61系統にて
鬼子母神前下車150m
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